山村 美暖早産は「安静」でどう変わる?子宮頚管とは子宮の下に繋がる赤ちゃんのためのトンネル。通常は35mm~40mmあるとされており、短くなることで早産のリスクが高まるとも言われています。妊婦健診で子宮頚管長が短くなっていることが見つかった場合、一般的に「安静」を指示されます。しかし近年は「安静にしても早産予防とは関係がない」ことが示唆されている論文も。2つの研究を取り上げて、子宮頚管と妊婦の活動量の関係を見ていきたいと思います。 2018年に発表された、イタリアの早産予防のための会( Italian Preterm Birth Prevention (IPP) Working Group)で行われた研究では300名の産婦さんを対象に以下のグループ分けが行われました。1)運動していたグループ:20分以上の運動を週に2回以上行っていた。2)運動していなかったグループ:20分以下の運動を週に2回未満行っていた。300名のうち約3割にあたる99名が1の運動していたグループに分類され、201名は運動していないグループに振り分けられました。また、運動していないグループの中でも90名はスタッフの進言に従わず、子宮頚管が短いと診断された後に身体的活動量を落とし、111名はもともと安静生活を送っていたということです。結果、37週以前の出産(早産)は2グループ中以下の割合で発生しました。1)運動していたグループ:22.2%2)運動していなかったグループ:32.8%以上のことから研究グループは「週に2回以上20分以上の運動を行うことは早産のリスクを高めるものではないが、予防することもはっきりとは期待できない」と結論づけています。 2018年に発表されたイスラエルの研究では、ウェアラブル(歩数計のように体に付けて身体活動を計測するもの)を使ったアセスメントが行われました。この研究では24週から32週の早産のリスクが高いとされる女性を対象とするために、子宮頚管が20mmよりも短い女性にウェアラプルを付けて生活してもらうように指示されました。研究の対象となった49名の女性のうち37名が早産となり、12名は37週以降に出産を迎えました。研究グループは回帰分析により「早産した女性は日別の歩行数が顕著に少なく、出産年齢、BMI、子宮頚管長などとは独立して、毎日の歩行量が早産に関係する」と発表し、「日中の活動量を減らすことが早産の予防になるとはいえない」と研究の成果をまとめました。 妊娠中の変化や予測できないとされる症状に関しては未だ多くの研究が行われています。裏を返せば、現在一般的に言われている「早産の予防のためには安静にする」という指示は、まだはっきりとした確証に基づくものではないということでもあります。早産を経験されたお母さんのなかには「私がもっとちゃんと安静にしていれば」とご自身の生活を責めてしまう方もいらっしゃいます。ですが上記の研究を見てもわかるように、過剰な運動でなければ日中の活動が早産に繋がるということは考えにくいのです。現在早産のリスクを伝えられた妊婦さんも、どうか「安静な生活」に対してストレスを抱えすぎないようにお過ごしください。山村
子宮頚管とは子宮の下に繋がる赤ちゃんのためのトンネル。通常は35mm~40mmあるとされており、短くなることで早産のリスクが高まるとも言われています。妊婦健診で子宮頚管長が短くなっていることが見つかった場合、一般的に「安静」を指示されます。しかし近年は「安静にしても早産予防とは関係がない」ことが示唆されている論文も。2つの研究を取り上げて、子宮頚管と妊婦の活動量の関係を見ていきたいと思います。 2018年に発表された、イタリアの早産予防のための会( Italian Preterm Birth Prevention (IPP) Working Group)で行われた研究では300名の産婦さんを対象に以下のグループ分けが行われました。1)運動していたグループ:20分以上の運動を週に2回以上行っていた。2)運動していなかったグループ:20分以下の運動を週に2回未満行っていた。300名のうち約3割にあたる99名が1の運動していたグループに分類され、201名は運動していないグループに振り分けられました。また、運動していないグループの中でも90名はスタッフの進言に従わず、子宮頚管が短いと診断された後に身体的活動量を落とし、111名はもともと安静生活を送っていたということです。結果、37週以前の出産(早産)は2グループ中以下の割合で発生しました。1)運動していたグループ:22.2%2)運動していなかったグループ:32.8%以上のことから研究グループは「週に2回以上20分以上の運動を行うことは早産のリスクを高めるものではないが、予防することもはっきりとは期待できない」と結論づけています。 2018年に発表されたイスラエルの研究では、ウェアラブル(歩数計のように体に付けて身体活動を計測するもの)を使ったアセスメントが行われました。この研究では24週から32週の早産のリスクが高いとされる女性を対象とするために、子宮頚管が20mmよりも短い女性にウェアラプルを付けて生活してもらうように指示されました。研究の対象となった49名の女性のうち37名が早産となり、12名は37週以降に出産を迎えました。研究グループは回帰分析により「早産した女性は日別の歩行数が顕著に少なく、出産年齢、BMI、子宮頚管長などとは独立して、毎日の歩行量が早産に関係する」と発表し、「日中の活動量を減らすことが早産の予防になるとはいえない」と研究の成果をまとめました。 妊娠中の変化や予測できないとされる症状に関しては未だ多くの研究が行われています。裏を返せば、現在一般的に言われている「早産の予防のためには安静にする」という指示は、まだはっきりとした確証に基づくものではないということでもあります。早産を経験されたお母さんのなかには「私がもっとちゃんと安静にしていれば」とご自身の生活を責めてしまう方もいらっしゃいます。ですが上記の研究を見てもわかるように、過剰な運動でなければ日中の活動が早産に繋がるということは考えにくいのです。現在早産のリスクを伝えられた妊婦さんも、どうか「安静な生活」に対してストレスを抱えすぎないようにお過ごしください。山村
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