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妊娠中の運動が分娩時間や帝王切開に与える影響【海外論文】

更新日:2022年5月6日

「妊娠中ですが運動してもいいですか?」と聞かれることがあります。その際私は「してもいい、のではなくて”した方がいい”です!」と強めに回答しています。(合併症がある場合などは除きます)

妊婦の運動には多くの利点がありますが、そのメリットを知れば「した方がいい」の理由を分かっていただけると思います。
その影響はホルモンの分泌からメンタルヘルスの改善まで多岐に渡りますが、この記事では≪出産への影響≫をお伝えしていきたいと思います。

 

陣痛にも分娩にも良い影響



2012年にアメリカで出版された、妊娠中の運動について記した本”Exercising Through Your Pregnancy”によると、妊婦の運動習慣の有無で分娩時間が大きく異なり、運動したグループの方が平均分娩時間が短くなったと書かれています。

また、運動したグループと比較グループの間には医療介入にも大きな差が生まれました。

運動したグループ

比較グループ

帝王切開

9%

29%

陣痛促進剤

29%

58%

鎮痛剤

51%

78%

鉗子分娩

5%

18%


帝王切開する率が約3分の1に



こちらの実験では、運動したグループの中で帝王切開になった出産が9%、比較グループでは29%と、運動を指示されなかったグループでの帝王切開の確率が約3倍という結果になりました。

帝王切開は「世界一幸せな手術」ともいわれますし、赤ちゃんを安全に迎えるために必要な処置として行われる医療行為であり、それ自体には何の問題もありません。

また陣痛促進剤や鉗子分娩も同様に、決して悪ではなく安全に出産を進めるために必要な選択ではあるものの、表の人数の差を見ると、いかに運動習慣が妊婦の体に影響を与えるかがわかります。

上記の実験はあくまで相関関係としての数字であり、運動しておくことで医療介入を未然に防ぐことが担保されるということではありません。
ですが、巨大児のリスクを下げる、母体の体力を備えておくというような観点からも、運動は妊婦さんが行えるもっとも身近な出産準備といえるでしょう。

 

”子宮口が全開”になってからの時間も約半分に



お産のピークともいえる「子宮口全開」。長く苦しい陣痛を乗り越えやっと子宮口が10cmまで開いたかと思えば、そこからは「いきむ」と「休む」を繰り返し、いよいよの誕生を迎えていきます。

子宮口が全開になってから赤ちゃんが出てくるまでをアメリカではセカンドステージと呼びますが、このセカンドステージの長さにも妊婦の運動習慣の差が表れるという研究結果があります。

1991年の研究によれば、運動していたグループのセカンドステージ平均時間は27分、それに対し、運動していなかったグループは平均59分だったそうです。

早ければいいというわけではありませんが、いきむだけの体力がなくなってしまい分娩が長引いてしまうケースもあります。
陣痛の波を何十回も乗り越え、ギリギリの体力のお母さんにとってラストスパートの30分の差は甚大です。

出産という大仕事を乗り越えるために、妊娠中の運動は自分にできる最大の投資かもしれません。

 

もちろん出産は千差万別で一概に数字だけで表せるものではありませんが、これらの研究のデータを見ると、いかに妊娠中の習慣が母体に影響を与えるかがわかります。
また「出産のための準備をしている」という実感は「自分で産む」という主体的な感覚を持たせてくれます。

運動というのは呼吸の練習や簡単なストレッチ、気持ちよく外を歩くことも含まれます。
まずは5分程度のエクササイズから、慣れてきたら徐々に増やしていき、前向きに「体の出産準備」を始めてみてください。

 

J.F. Clapp and C. Cram 2012, Exercising through your pregnancy (Omaha, NE: Addicus Books)

Botkin, C., and C.E. Driscoll. 1991. “Maternal Aerobic Exercise: Newborn Effects.” Family Practice Research Journal


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