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妊娠中の運動が出産の痛みを軽くする【海外論文】

更新日:2022年4月29日

「人生で一番痛い」「男性なら気絶するほど痛い」など、様々な言葉で表現される出産の痛み。
特に初産婦の方が経産婦よりも痛みの感じ方が強いと言われています。

近年は無痛分娩や和痛分娩などの選択肢も増えていますが、ソフロロジー法など、自然分娩のまま母体の負担を減らす方法や考え方も見直されています。出産に立ち向かう女性のからだでは一体何が起こっているのでしょうか。

この記事では、出産中痛みが軽減されるメカニズムと”出産の痛みと運動習慣”について調べた海外の研究をご紹介します。
 

痛みの緩和剤、β(ベータ)エンドルフィン


陣痛の痛みは”波”に例えられることもありますが、出産中母親には段階的にさまざまな痛みが伴います。

陣痛のはじまりは軽い生理痛程度ですが、子宮の出口が広がるとともに痛みは強くなり、半分ほど開いてくる頃になると下腹部から腰全体にかけ急に痛みの強さが増し、また痛みを感じる範囲も広がることが多いようです。

この時母親の体はこの強烈な痛みに適応するため、痛みを抑える【β(ベータ)エンドルフィン】というホルモンを分泌します。

マラソン選手が快感や陶酔感を覚える「ランナーズ・ハイ」と呼ばれる現象がよく知られていますが、これもβエンドルフィンのはたらきによるものです。

βエンドルフィンは苦しさや痛みに反応して分泌されるため陣痛の最初から全く痛くないということは難しいですが、脳内で鎮痛作用が働いてくれたかどうかが「気絶するほど痛かった」という人と「想像よりも痛くなかった」という出産体験の個人差に関係していることは間違いないでしょう。

 

運動している人はβエンドルフィンが増える


脳内麻酔と呼ばれるこのβエンドルフィンですが、1989年にアメリカの産婦人科誌に掲載された論文によると「運動習慣によりβエンドルフィンの分泌が増える」ということが分かっています。

以下のグラフは陣痛が開始してからの母体のβエンドルフィンの分泌レベルを示しています。


グループB(上の線)が【運動していた妊婦群】を、グループA(下の線)が【運動していなかった妊婦群】を示しています。

まずスタートの時点から【運動していた妊婦群】のほうが高いβエンドルフィン分泌量を示しています。その後陣痛が進むにつれ両グループで分泌レベルが上昇していますが、グループBの方が上昇率がやや高く、終了時の分泌量の差はおよそ1.5倍にも開いています。

 

痛みの感じ方にも差が


運動習慣のあったグループの方がβエンドルフィンの分泌量が多かったことが分かりました。
では実際に産婦さんたちが感じた痛みはどうだったのでしょうか。

こちらのグラフは出産を終えた両グループに陣痛中の痛みの程度を数字で回答してもらったものを表したグラフです。


【運動していなかった妊婦群の】グループA(上の線)に比べ、【運動していた妊婦群】のグループB(下の線)の方が、痛みの程度が終始低かったと回答しています。

また、グループAでは前半でグラフが強く上昇するタイミングがあり、急激な痛みを感じた方が多かったことを示しています。
一方、グループBでは常に緩やかな推移を示しており、痛みの変化も緩やかであったことが推測されます。

 

この研究により運動習慣がβエンドルフィンの分泌を増やし、実際の痛みの感じ方にも差を生んでいたことが分かりました。

痛みというものは主観的なものですから必ずしも数値で比較できるものではありませんが、来る出産の日に備え、自分でできる対策があるというのは妊婦さんの不安を軽減させてくれることにも繋がるのではないでしょうか。

妊娠中の運動のメリットは体力づくりや体重のコントロールだけではありません。
なかなかやる気が感じられない妊婦さんもぜひこの記事をきっかけに体を動かす習慣を始めてみてください。

 



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