妊娠前は運動習慣がなかった妊婦さんが注意したいポイント3つ山村 美暖2022年1月30日読了時間: 4分更新日:2022年4月29日「妊婦さんは安静に」と言われていたのはもう30年前の話。今では妊娠中の運動が与えるさまざまないい影響が知られています。しかし妊娠中は非妊娠時の状態と比べてさまざまな点で特殊な状態。注意しておきたいポイントを押さえて効果的に、そして安全に体を動かしましょう。 ストレッチは頑張りすぎない股関節を柔らかくして出産に備えるのはとても大切なことです。しかし、柔らかければ柔らかいほどいいのか、といえばそうではありません。実は、もともと柔軟性の高い人も注意が必要です。妊娠中に体に変化をもたらすホルモンの一つとして知られている「リラキシン」は、靭帯をゆるめる働きがあります。通常靭帯が硬くガッチリと関節を固定してくれているため、ストレッチの動きで骨がずれてしまうというようなことはなかなかありません。しかし、リラキシンが分泌されている状態では≪筋肉を伸ばしているつもりが靭帯を伸ばしてしまう≫ことになりかねず、結果として骨盤のゆがみや関節の痛みを招いてしまう可能性もあります。靭帯は伸びてしまうと自然に縮むことはありません。間違っても妊娠中に180度開脚を目指したりということがないようにしてください。 呼吸を意識して運動を行う妊娠中、特に中期以降に出てくる体の変化のひとつが「呼吸が浅くなる」ことです。週数が増すごとに子宮はムクムクと大きくなり、最大で4センチほども横隔膜を押し上げます。横隔膜は本来は空気を吸い込むときに下に動きますが、子宮により圧迫されている状態ではその機能が制限されてしまいます。日常生活でも息があがるような状態ですから、浅い呼吸のまま運動してしまうと運動中に酸欠を感じることも少なくないでしょう。対策としてできることのひとつとして、運動前に深呼吸を繰り返すことをおすすめします。深呼吸することで、横隔膜をふくめた呼吸に関連する筋肉が動きやすくなり、運動中にも呼吸がしやすくなることが期待できます。また、40分以上の連続した運動は胎児への酸素供給量が減る場合があるため、息が上がってきたなと感じた場合には5分程度の休憩を挟んでから再開しましょう。 臨月に入っても運動をやめない多くの妊婦さんにぜひお伝えしたいことが「臨月に入ったからといって運動をやめない」です。妊娠をしていたグループは運動をしていなかったグループと比較して「陣痛時間が約3分の1に及ぶほど短くなった」というデータもあるほど運動は出産に及ぼす影響が大きいのですが、「運動を途中でやめたグループは運動をしていなかったグループと同じような結果になった」というデータも存在します。つまり「出産まで運動を継続すること」に意味があるのです。週数が増すにつれお腹は大きくなり、何をするにも体が重いと感じることでしょう。実際に以前アンケートを取った際、「運動をしなかった理由」は「億劫」が一番でした。出産も迫り入院セットの準備や手続きの下調べなど意外とやることも多い中、運動の優先順位が下がってしまうのは仕方がないかもしれません。しかし、せっかく培ってきた柔軟性や筋力は、座りっぱなしの生活であっという間に衰えてしまいます。むしろ出産という大仕事を控えている臨月だからこそ、体をアクティブに保ち、コンディションを整えていただくことを考えていただきたいと思います。 運動と聞くと尻込みしてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、産後に待ち受けているのは睡眠不足の毎日と日々重くなる赤ちゃんです。体力をつけ、ホルモンの分泌を良くし、メンタルを整えておくことは産後の自分を大きく助けてくれます。また、時々運動による流産を心配されている方もいますが、妊娠中の運動と流産の因果関係はないと結論付けられています。妊娠中の運動は非常にメリットが多く、転倒や脱水に注意すればリスクはほとんどありません。まずはラジオ体操程度の運動からはじめ、徐々に活動量を増やしていけるといいですね。
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