産後の運動、いつからはじめる?なにからはじめる?山村 美暖2022年6月9日読了時間: 6分更新日:2023年12月22日産後の運動には多くのメリットがありますが、いつから行うのか、どのように始めるのか、産院からの指示はあるほうが珍しいのが現状です。運動とは言っても、息をきらしたり、汗をかいたりするほど行う必要はなく、むしろ誤った種目や方法の選択は尿漏れや腰痛などの原因に。このコラムでは産後の運動にどのくらいのメリットがあるのか、また開始の目安や、どのように行うのが良いのかということについてお伝えしていきたいと思います。 産後の運動のメリットとは産後の運動には以下のようなメリットがあると言われています。・腹筋群の機能を取り戻しやすくする・血流を改善し疲労回復を早める・睡眠の質を上げる・授乳などによる姿勢のくずれを予防する・産後うつを防ぐ可能性がある特に背骨を支える機能が衰えたままだと腰痛を引き起こしたり、内臓が下がってしまったりと、その後の長期的なトラブルにつながります。また、赤ちゃんのお世話がはじまり睡眠サイクルが崩れる産後は、睡眠の質や体の回復力が非常に重要になってきます。体の回復力は血流の良し悪しと同義ともいえますが、ベッドに完全に寝たきりでは血流も悪化してしまい、自律神経も乱れ、逆に体調が悪くなってしまいやすい場合が多いでしょう。少しずつ体の機能や筋力を取り戻していくことは産後の肥立ち(=妊娠前の状態に戻ること)をよくすることに繋がりますから、ぜひ体調と相談しながら実践していただきたいです。 いつから始めるのが正解?アメリカ産婦人科学会によれば、「妊娠中の経過が順調で、経腟分娩で正常に出産を行った場合、直後及び数日後から運動を開始することができる」と言われています。(帝王切開だった場合、合併症があった場合などは病院と相談する必要があります。)日本でも病院によって産後1日目からの産褥体操が推奨されていますが、「一か月健診まで待ったほうがいい」や「3か月以降からスタートするのがいい」というような意見もあり、混乱してしまうところかもしれません。1か月待った方がいいという意見は「悪露が出ている間は貧血になりやすいから」という理由が多く、3か月待った方がいいという意見は「まだ骨盤がぐらぐらしている可能性があるから」という理由が多いようです。この「産後 運動 いつから」という問いに対して、忘れてはいけないのが「どんな運動」かということです。強度や時間、体の調子をふまえ、効果的に運動を取り入れていきましょう。 産後すぐは「寝た姿勢」が正解まず前提としてお伝えしておきたいのが「産後は横になり体を休める」のがもっとも大切なケアだということです。ここで重要なのが「横になる」ということ。帝王切開・会陰部の切開有無にかかわらず、全ての産婦さんの骨盤底筋は妊娠と出産によるダメージを受けています。重力により内臓が積み重なるように乗っかってしまっては回復が進むどころかよりダメージを与えてしまいかねません。また妊娠中にお腹が大きくなることで引き延ばされた腹直筋は、非妊娠時と比べると実に15センチ以上長くなり、「腹直筋離開」という腹筋の束が2つに割けたような状態になります。この状態は当然すぐに戻るわけではなく、子宮復古と平行して徐々にしか進みません。腹直筋離開の回復とインナーの機能回復に関しては関連がないという研究もありますが、非妊娠時と比べ引き延ばされていたのは腹直筋だけではなく、お腹まわりのすべての筋肉が妊娠による影響を受けています。当然個人差がありますが、内臓が下がっているような感覚があるうちは垂直姿勢を避け、ベッドに横になっておくという意識が大切です。このように、まずは体を休めることが一番であることを前提としてとなりますが、先述のとおり、血流を良くしたり、体のこわばりを取ったりすることは母体にとってよりよい産後のスタートに繋がります。次の章では実際にどのように産後の運動を進めていくのが良いのか触れていきます。 「血流」と「呼吸」を取り戻そう「お腹周りを元に戻す」「寝たままの姿勢で」と聞いて「腹筋」や「プランク」と思った方は要注意。出産後赤ちゃんがいなくなったお腹はまだまだ妊娠5か月目くらいの大きさ。お腹をへこませたいという思いが焦りと共に沸いてくるかもしれません。ところが臓器が下に下がりやすくなっている産後の状態で腹筋に圧を強くかける運動を行うと、膀胱などの骨盤内の臓器の位置を下げてしまう可能性があり、逆効果となることも。産後の運動でまず意識したいことは「血流をよくすること」と「呼吸がしやすい体にもどすこと」です。妊娠中から呼吸の浅さを感じる妊婦さんは多いですが、出産を終えたからといって自然に呼吸が深くなるわけではなく、むしろ出産というストレスや育児動作を経てさらに浅くなってしまうことがほとんどです。横隔膜は骨盤を下から支える骨盤底筋と連動して動くはたらきもあるため、深い呼吸を練習することや呼吸の肝となる胸郭の機能を取り戻すことは内臓を引き上げることにも繋がります。横になった状態は骨盤底筋への負担が少なく、収縮も感じやすくなります。まずは腹式呼吸やケーゲル体操などの骨盤底筋トレーニングを取り入れ、骨盤底筋を引き上げるような感覚がついてきたらステップアップのサイン。徐々に座位や立位での動きに移行しますが、まずは一般的なヨガのポーズや重量を使わないトレーニングなど、飛んだり跳ねたりする動きがないようにしましょう。また「血流の良さ=回復力の高さ」と唱える医師もいるほど、血流は重要です。ストレッチ(柔軟運動ほど強く行わないようにしましょう)や、関節の曲げ伸ばしだけでも血管の収縮が促されます。こちらもまずは寝た姿勢で行える股関節の動きや四つ這いで背骨を動かすことから始め、悪露や尿漏れなどがなくなってきてから一般的なヨガのポーズや重量を使わないトレーニングなど、飛んだり跳ねたりする動きがないようにしましょう。寝た姿勢や四つ這いの動きであれば、産後の経過が順調であれば産後数日目から1日10分程度ずつはじめ、体の反応と相談しながら少しずつ時間と動きのバリエーションを増やしていくことをおすすめします。疲労を感じたら休みの日を作りつつ、少しずつ産前の体力や機能を取り戻していきましょう。 焦らない、でも、ないがしろにしない産後に焦って痩せようと運動することはほぼデメリットしかないと考えていただいていいと思います。しかし同時に「自分の体のお世話を怠る」というのもまたデメリットしかありません。出産はケガではありませんが、産後でダメージを受けた体を元に戻してあげられるかどうかはどう過ごすかが大きく影響します。赤ちゃんのお世話に忙しくなる日々ですが、ぜひご自身のための時間を作ってあげられるといいですね。 出典:https://www.kosaka.or.jp/utility/pdf/0202-12.pdf 出典:https://event.rakuten.co.jp/family/story/article/2021/postpartum-confinement/
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